『ガニメデの優しい巨人』
ガニメデの優しい巨人 ジェイムズ・P・ホーガン 池 央耿 by G-Tools |
この間紹介した『星を継ぐもの』の続編。前作は月で発見された謎の死体”ルナリアン”を巡る謎解きの話だったが、今作は、前作でガニメデで発掘された宇宙船という形で登場したもう一つの異星人、ガニメデ人=ガメニアンとの接触を通じて、ミネルヴァ(ルナリアンとガメニアンの母星)崩壊の謎ばかりか、人類誕生の秘密までもが解き明かされる。
今作の一番の魅力は、なんといってもガメニアン。SF史の中でも、こんなにも穏やかな種族、そして、平和的な接触を果たした異星人はいないと思う。地球=生物が生存競争というなの闘争を繰り広げる地獄、というビジョンは半村良の傑作『妖星伝』と似ているが、ガメニアンがかたる人類のビジョンは非常にポジティブで、これもまたSFでは珍しい。『妖星伝』で人類の未来に絶望した人には、いいリハビリになる。個人的にはホーガンほど人類の未来に楽観は出来ないのだけれど……。