『パッション』
パッション ジム・カヴィーゼル モニカ・ベルッチ マヤ・モルゲンステルン by G-Tools |
メル・ギブソンが私財を投じて製作した、キリストが捕まり磔にされるまでの12時間を描いた作品。公開時には、この映画をみた人がショックで死んだとか、いろいろと話題になった。
本編は2時間にわたって、ひたすらイエス・キリストが痛めつけられるシーンが続く。それもかなり痛々しい描写で。それで、いわゆる”神の子”キリストが描かれていたのなら、正直ヘドが出たところだが、メル・ギブソンは”人の子”人間キリストを描いた。その点は評価したい。度々登場するイエス本人にのみ見える黒いフードの人物は、おそらくサタンを暗示するもので、キリスト自身の信仰への迷いを示しているのだと思う。あれだけ痛めつけられた”人間”が自らの神への迷いを生まなかったとしたら、そんなのは嘘だと思う。あと、キリストものというと、悪役=ローマって感じで描かれることが多いが、この映画だと結果的にだけど、ユダヤが悪役になってて、ユダヤの人にはちょっと気分悪いかも。
ただ、自分は感動も共感も得られなかった。むしろ、「よく言うよ」というさめた感想をもった。イエスが語ろうとした教えと、その後のキリスト教会の行ってきたこと、現在のキリスト者たちの振る舞い、それらの間にあるあまりにも大きな懸隔を思ったとき、白々しいとすら感じる。赦し? 寛容さ? 汝の敵を愛せ? よく言う。キリスト者たちの築いてきた血塗られた歴史のどこにその言葉があるというのか。
一応、多少なりとも聖書の知識があった方がいいかも。