『ぼっけえ、きょうてえ』

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
岩井 志麻子

魔羅節 (新潮文庫) 夜啼きの森 (角川ホラー文庫) チャイ・コイ (中公文庫) 黒焦げ美人 (文春文庫) 合意情死 (角川ホラー文庫)

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ホラー?
 第6回、日本ホラー小説大賞、大賞受賞作。日清戦争の頃の岡山の山村を舞台にした、怪談話。
 日本ホラー小説大賞と言えば、『パラサイト・イヴ』や『黒い家』など、過去にそうそうたる作品を世に送り出した賞。
 展開される話自体は、ありがちな怪奇話なのだが、一番思ったのは、岡山の山村、明治期という時代設定のうまさ。近代が入り込みつつも、依然として因習が支配する世界というのは、異質なものとして遊離しがちな過去を、れっきとした現代とも連続性をもつ存在として感じさせれくれる。だから、より恐怖を身近に感じられる。そういう意味で、この作品で一番怖かったのは、舞台設定そのものだと思う。