『姑獲鳥の夏』

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)
京極 夏彦

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[楽天ブックス] 姑獲鳥の夏( 著者: 京極夏彦 | 出版社: 講談社 )

ミステリー。サスペンス。
直木賞作家、京極夏彦のデビュー作。メフィスト賞第0回の受賞作というか、京極夏彦がこの作品を持ち込み、ヒット。その後、期間を設けず、編集者が良いと思ったものを出版する特異な形式の賞として創設されたのがメフィスト賞。つまり、京極夏彦からメフィスト賞がはじまり、そのメフィスト賞から、森や清流院、舞城、佐藤、西尾など、そうそうたる個性派作家を世に送り出したことは有名。
心脳問題から幽霊を謎解き、量子論から観察者のジレンマから唯脳論的世界観をかたる冒頭には驚いた。これはいったい何の話なんだと。このあたりで置いていかれた人は、残念ながら適性が無かったと思って諦めるしかない。しかし、冒頭をこせた人は、かならず京極の語る世界観に魅了される。
ミステリーとしては、かなり強引な事件の顛末といい、あっさりと読めてしまう一番の仕掛けといい、たいしたことはない。ただ、細部がすごい。大きなトリックは分かっても、細かい伏線がつながり紐解かれる終盤、真の犯人である”因習”を超常ではなく、社会、文化、民俗学の見地から”祓う”京極堂の”仕掛け”は見事につきる。小手先のトリックや犯罪自体が主人公の凡百のミステリーとは一線を画す、京極夏彦独自の世界観がある。それこそが最大の魅力。はまった。