『約束の柱、落日の女王』

約束の柱、落日の女王 (富士見ファンタジア文庫)約束の柱、落日の女王 (富士見ファンタジア文庫)
いわなぎ 一葉

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ファンタジー
第16回ファンタジア長編小説大賞、準入選作品。ファンタジアは大賞がめったに出ない賞なので、準入選といえども、かなり期待が高い。個人的な感覚としては、ファンタジアの準入選=電撃の大賞ぐらいの期待値。
物語はファンタジアらしい、中世ヨーロッパ風(RPG風?)の異世界を舞台に、タイムトラベルによる出会いと、別れを描いたもの。タイムトラベルものの宿命で、オチでは勝負できない。タイムトラベルものは予定された結末へ導く物語を読ませるもの。というわけで、この作品も作者はストーリーが書きたかったように思える。それはある程度成功しているように思う。ただ、そのために、キャラクターの背景や描写にイマイチ説得力を感じない。もう少し、登場人物に感情移入できれば、べたなストーリーでも感動できたと思うのでけれど。
ジャンル的にも、世界観的にも、ストーリー的にも、どうしても第14回大賞受賞の『12月のベロニカ』と比較されてしまいそう。そうなると分が悪い。ベロニカもべたで読めたけど、読ませる工夫(叙述トリックっぽい?)があったし、物語の中で登場人物に繰り返しの構造を取り入れることで、人物に奥行きを出していた。この辺りが大賞と準入選の差なのかも。