ある権利者側の人間の呟き2 結局コンテンツに金払うっていうのが定着しない。。。

今年一年アニメの配信関係の仕事をガッツリしていたわけだが、その実感がこれ。世の中が不景気なのを差し引いても、アニメの配信(有料配信=広告モデルじゃないヤツね)で上がる売り上げって、完全に伸び悩みな傾向がはっきりしちゃってる印象。今年の前半ぐらいまでは、ニコニコの締め付け強化とかで、それなりに順調だったんだけど、どのライセンシーからの上がりも正直伸びてない。
でも、比較的ましなのが、SVOD(料金定額:見放題)モデルでやってるところからの売り上げ。上で、伸び悩みって言ってたのは、どれもVOD(個別課金:動画を見るたびにクレジットカードやらで金払って認証)のライセンシー。ようは、アニメを見るために金を払っているいんじゃなくて、アニメを含む色々な番組を自由に見る権利にお金を払っているパターンなので、ユーザーの意識としては、携帯電話料金とか、インターネットのプロバイダ料金みたいな、いわば「インフラに金を払っている」状態、というか、金払っていることをユーザーはあまり意識していないのじゃないかと(もちろん、月次の請求が来ると意識はするのだろうけど、少なくとも”コンテンツ”を見る瞬間は支払いを意識していない)。
それに比べるとVODは、見るたびに認証の手続きが入って面倒くさいは、目の前でお金を払う以上、どうしてもコストとベネフィットを計算してしまうわで、どう考えても厳しい。アメリカのような小額決済の仕組みが整っていない以上、今後も、「コンテンツそのものに」お金を払うというのが定着するのは相当厳しいんじゃないかと思う。
例えば、アニメ1話30分=105円とすると、ゲームとかなら、20時間遊んで6000円なら1時間300円、もっと長く遊べばどんどん時間単価は安くなるわけで、価格競争力的にも厳しい。よくよく考えるとレンタルDVDよりも高い。4話収録のDVDを350円で1週間借りられるとすると、1話=87.5円。それより画質も悪いとなれば、、、
でだ、コンテンツ屋としては、コンテンツに金を払ってもらえるようにならないと商売にならない。と、そう考えている中の人も多いのだが、ちょっとまて。今までだって実は、本当はユーザーは「コンテンツそのもの」に金を払っていたんじゃないんじゃないか?
どういうことかというと、たとえばDVDとかだって、実はそれ自体は本物じゃない。MPEG2に変換・圧縮されたもの、いわばコピー=偽者で「コンテンツそのもの」ではない。ユーザーはそれを承知でお金を払っていた。何に? 多分、それはパッケージとか、買って手元に持っているという経験、そういうものに対してなんだと思う。ところが現状の有料配信は、画質は悪いは、保存は出来ないは、パッケージのような付加価値もないわで、そんな状態で、コンテンツそのもの(劣化した。。。)=データを見る権利だけを売っている状態。そんなんで、売れるわけがないよなあと。
ただ、すべてのコンテンツ(コンテンツそのもの)が売れない、とは思っていない。たとえば音楽配信iTunesとか、着うたフルとか)はわりとマーケットとして成立している。でも、アニメと音楽では決定的に違う部分がある。それは値段。音楽の場合は、もともとのデータ=コンテンツそのものと、配信しているデータの差が比較的小さい。そして、そのちょっとの劣化に納得が出来る値段設定がされている。つまりは、パッケージの持つ付加価値と、流通にかかる費用+パッケージの製造費を天秤にかけて、安い方がいい、というところでユーザーが納得しているということ。
で、アニメの場を削ったところで、対して変わらない。むしろパッケージとかつけて単価を上げないことには制作費が回収できない。制作費だけじゃなく、権利者への支払いなど、出ていくものも多すぎる。
さらに致命傷なのが、基本的に「見るだけならタダ」という習慣が染み付いてしまっていること。見るだけならタダだったところに、「見るだけの権利」を有料で買ってくれっていっても厳しいよ。まあ、放送にはなくて、配信にはある強みとしては、好きな時に好きな所から見られるってのもあるけど、それだけでは、金を払う気にさせるには全然足りないということなんだろう。
だからといって、今すぐなにか配信ならではのメリットを提供できるかというと、、、まあ、それが出来ていたら、こんなことにはなっていないわけど。そうなると、もう、上で書いたSVOD見たいなやり方で、ユーザーが直接、個別のコンテンツに金を払うということを意識させないようにするしか方法がないのかと。。。無料の広告モデル(YouTubeとかGyaO)も結局はそういうこと。ユーザーじゃない人が金を払い、ユーザーにはそのことを意識させないようにしているだけ。
でもね、広告モデルから上がってくる売り上げって、本当に少ないのよ。あきれるぐらい。そりゃWBもYouTubeから引き上げるわってぐらい少ない。テレビCMが大幅に減って、TV局が赤字に転落、新聞も赤字で、ラジオや雑誌の広告費をWEBが追い抜いたので、WEB広告の総額自体は大きいはず。でも、入ってくる広告収入はめちゃくちゃ少ない。なんでかって考えて見ると、多分それは、WEBが基本的にOPEN参加の市場だからじゃないかと。放送みたいな許認可権ビジネスだと、市場に参加するプレイヤーは一定数以上には増えないので、広告の単価が下がりづらい。でもWEBはその辺が逆で、数が多すぎて、特定の大きな影響力を持つメディアが存在できず(存在してもかつてのテレビほどではない)、マスがないんだと思う。
うーん、まとまらない。まあ、今年一年やってみての感想だから、結論がなくてもまあいいか。最後に一言だけ、、、
これはもう完全な構造不況です。決してサブプライムローンがどうだとか、世の中が不景気だからだとか、そんなの関係ねー!
ですので、2、3年、ただ耐えればまた良くなる、なんてことはありえません。残念!
長文失礼しました。。。